新しい世界
「うぎゃぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゲップが出なくて泣きじゃくる生後3週間と数日の息子を奥さんに託し、車で出かけた。
一人で運転することが久しぶりな気がするのは、気のせいではあるものの、新鮮な気がした。
一面田んぼの道や、街の喧騒の真ん中、見知った道を何気なく通り抜けていく。
運転中にも脳裏には、泣きじゃくる我が子と、そのバルスにやられそうになる奥さんの姿。笑みと憂いが同時に起こりそうになる。
ふと見上げると、ビルの間で赤信号。
僕は敏感なため、普段は光や音、騒がしさにストレスを感じてしまうが、この日は違った。
光や音、騒がしさはノイズキャンセリングされ、景色を構成する1つ1つが、鮮明に目に焼き付けられる。
息子にとっては、全てがまだ見ぬ新しい世界。
木々、ビル、ビルの窓、街灯、街灯に止まる鳥、橋、川、夕焼け、人、車…全部。全部が刺激的で新しい。
そう思った瞬間に、感動と高揚感が込み上げて全身を駆け巡った。息子と奥さんのおかげで自分も新しい喜びに出会えている。
2人に本当に感謝しなければ、伝えなきゃ、と家路を急ぐ。
「ただいま!」
「おぎゃああああいああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
(はなくそが詰まって苦しいぃぃ、とってええええええええええ!!!!)
茶昊