パン職人の世界
朝4:30に起きる。体がもう勝手に起きる。
支度をして職場へ。
5時過ぎから仕事が始まる。
今日は窯。オールポジションどこでもできるし全部好きだけど、窯のポジションは特別性に合ってる。
パンを発酵させるホイロは3台。
成形されたパンが天板にきれいに並べられて発酵している。ホイロは3台、それぞれ上下があり、合わせると6箇所。注意を凝らして発酵具合が見極める。
発酵具合が未熟なことを「わかい」と言う。
逆に過発酵なことを「オーバー」と言う。
わかくもなく、オーバーでもない。適正な発酵具合を見極めるのがおいしいパン作りの基本。
そろそろホイロのドックパンの発酵が来る。
いまチリドックを焼いている窯が空くまで8分。温度帯はそのままでいい。
塗り卵をするには少し生地の表面の水気をとった方がいいから、少しわかいけどドックパンを出すタイミングはいま。
ホイロからラックにドックパンをすべて出していく。8個並べられた鉄板が12枚。数にして96個。
チリドックが焼けるまであと3分。
先にホイロから常温へ出していたドックパンは窯の熱気で水気が取れてきた。卵をていねいにドックパンに塗っていく。
ハケの毛先で生地を潰さずに。むらなく均一に塗る。少しの力加減でハケは生地に刺さり、萎んでダメになってしまう。ぬりむらがあり、卵が1箇所に多くなってしまえばそこはひび割れが起きる。
繊細に。でも速く。
夏場はうかうかしてると窯の熱気で常温でもホイロに近く、すぐ発酵してしまう。
もたついていると、どんどんホイロのパンたちは発酵していき、すべてオーバーになってしまう。
1分。
すべて塗り卵を完了。
あと1分ある。1分もある。
1分あれば、焼き上がったパンの整理整頓や、ホイロでパンの発酵具合を見極める余裕もある。
よし、チリドックが焼き上がった。
すかさずドックパンを入れていく。
と、このようにその時々の状況判断、見極める力、スピードと繊細さ、段取りが求められるのが窯というポジション。
少し大袈裟な部分もあるけれど、大体こんな感じで日々仕事をしている。
1分の重みというのかな。
限られた時間の中でいかにたくさん無駄なく動けるか。行動を刻めるか。
それって結構根性論寄りの技術なんだけど、職人の基本。
流清