「 1984 」
中国企業が色んな意味でいま世界を賑わせている。
最もホットな話題はファーウェイだが、僕がいま一番関心を持っているのは中国最大のIT企業「アリババ・グループ」。
そのアリババの金融部門「アント・フィナンシャルサービスグループ」が提供している「芝麻信用(セサミ・クレジット)」が中国政府を巻き込み中国全土を支配する新しいシステムとなりつつある。
簡単に言うと、この「芝麻信用」は人々の社会的信用度を数値として見える化する。
最低値が350点、最高点が950点。
そして点数に応じて、様々な「特典」がある。
例えば、高得点者はホテルなどでデポジットが免除されたり、賃貸物件の保証金が無料もしくは少額になったりする。
あとマッチングサイトで高得点者専用のサイトに参加できる。マッチングサイトはまさに個人の信用力がものをいう世界でもあるのでこれはうまい活用だなと思った。
今挙げた特典はほんの一例。
そしてスコアは以下の5つの観点から測定される。
1)身分特質:社会的ステイタスや高級品の消費など
2)履約能力:支払い履行能力
3)信用歴史:クレジット履歴
4)人脈関係:交友関係の社会信用スコア
5)行為偏好:消費行動の偏り
特に5がやっかいだ。本当かはわからないけれどK-POPの過激な追っかけがそれを理由にスコアを下げられたということや、一度カンニングをしたら生涯その記録が残るということもあるらしい。
もともと中国は超学歴社会だが、これからは学歴や職歴に加え、「スコア」を意識して自らの行動を律するようになるだろう。
「品行方正」な中国人が増えるのは喜ばしいし、多民族国家(大部分が漢民族だが)においてひとりひとりに行動の規範を持たせる意味ではこのシステムには期待したい。
しかし、中国共産党が独裁性質を持つことを鑑みるに、ジョージ・オーウェル著「1984」のような超統制監視社会に陥る危険性も孕んでいることを忘れてはいけない。
多民族を「品行方正」に導く灯火となるか、それとも多様性と社会的寛容を焼き尽くす業火となるか。
動向を追いたい。
流清